Scissors, Fools, Tools

このサービスはこういうふうに使うもので、そういう使い方は間違っている、正しくない、みたいなのを見かける。ひらめいったーで、それ用に作られたツールはないけれど、これをこうつかえばそのまま代用できるじゃん、みたいなのを見かけたりする。

たいていのサービスは、つくったひとがこういうことがしたい、というのを元に機能やみためがデザインされている。Creating Passionate Users: Making happy usersに書いてあった

“Make the right thing easy and the wrong thing hard.”

というフレーズそのままで、そのサービスが想定している使い方であれば、かんたんに使えるし(想定している使い方をかんたんにできないのならそもそもデザインがおかしい)、想定していない使い方だとかんたんにはできないことが多い。

想定されていない使いかた

でも、たいていのサービスは、想定されている使い方以外の使い方ができる。カレンダーの予定欄に日記を書くことだってできるし、ブログにひたすら写真だけをアップロードして写真倉庫にすることだってできる。

想定されていない使い方をするのはかっこいい。想定されていない使い方をしているのに、いちばんはじめに出会ったのは8年くらい前だろうか。とある日本のサイトに設置されているチャットに、なぜかドイツの人たちが入り浸ってドイツ語でチャットしまくっていた。あるツールが設置されている理由を完全に無視して他の使い方をすることができるというのにそのとき気がついた。

2chくわしくないのだけれど、2chでスレにしおりを入れるというのも、かっこよかった。

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
俺様用しおり
 ∧_∧
( ・∀・)< 今日はここまで読んだ
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

みたいなカキコをする。ほんとにしおりとして使うためにカキコしてるわけじゃないだろうけど、みんなで使うためのものを自分だけのために使うという考え方に、ドイツ人がチャットを占拠しているのとおなじものを感じた。

そのツールを作ったひとが想定している使い方をばっさり無視して、自分の好きなように使うのはかっこいい。

メッセンジャー

ある日、自転車メッセンジャーのスタイルを読んで

無鉄砲で危険で、時には法律違反だって思われるような走りで沢山の人をイライラさせたりしてたら…ほら、これって若者の崇拝するアイコンの持つ条件がほとんど揃ってますよね!(笑)

の部分で人間の本性を考えるに似たようなことが書かれていたのを思い出した。

男性は痛みによく耐え、地位や注目や、そのほかのあやしげな報酬のために生命の危険をおかそとうする意欲も強い。「崇高なまでにばかげた方法でみずからを遺伝子プールから抹消し、人類の長期の存続を確実にした個人」に毎年贈られるダーウィン賞は、ただでコーラを手に入れようとして販売機を傾け、その下敷きになってしまった男、だれがいちばん強く対戦者地雷を踏みつけられるかを競った三人の男、気象観測用の気球を結びつけた芝生用のイスに座って地上二マイルまで飛びあがり、海まで流されたパイロット志願者(彼はヘリコプターに救助されたため、選外賞しかもらえなかった)などである。

人間の本性を考える(中)124ページより。

ちょうどこの本を読んでいたときに小学生が閉まる防火シャッターをくぐって遊んでいて挟まれる事故があったので、よく覚えている。でも、小学生の男の子的には確実に防火シャッターが最も閉まっている状態でくぐり抜けたやつが当然偉くて賞賛の的になるのは当然だ。今の自分でも共感できる。自分も階段を何段飛ばしで飛び降りれるか、みたいなのをあやしげな報酬のためにやった。

大人になると、そのあやしげな報酬がどれくらい実体のあるものかを判断するようになるけれど、それでもやっぱり心の中にはそういうあやしげな報酬のために危険をおかそとうすることをかっこいいと感じる部分はそのまま残っている。馬鹿げたことをしているという目で眺めつつも、賞賛を贈らないではいられない。

Napsterは、圧倒的に便利だったというのもあるけれど、それだけではなくてインターネット上に無鉄砲で危険で、時には法律違反だって思われるような小学生男子的価値観と照らし合わせて”かっこいい”ものをはじめて(自分の知る限り、だけど)みせてくれたところにしびれたのかもしれない。

マッシュアップ

そんな小学生男子的価値観でいけば、サービスをサービスが想定している方法で使うことほどださいものはない。nisshi.yugop: About Samplingで書かれている

所謂マッシュアップ(死語)における引用元/引用先の関係としては、こんな風に引用元を全くもって粗末に使い倒し、美味しいとこだけおんぶに抱っこしつつ、ひょいっと違うレベルに組み替えてしまう、てのが最高なんだと思う。よくある「とりあえずマッシュアップしてみました!えへ!」的なサービスって、「お前らGoogleとAmazonの奴隷か」みたいな感じが否めないんだけど、このサービスぐらい「美味しいとこだけイタダキマース」感が強いと、 YouTubeの中の人、ちょっとイラっとしそうだもん。

の部分には、上に書いた小学生男子的価値観でかっこいい!というのがあるんじゃないかと思う。用意されたAPIを、相手の意図とは違う、世の中の作法を無視した方法でもって使うからかっこいいのだと思う。

沢山の人をイライラさせたりあやしげな報酬のために才能の無駄遣いをすること、それは昔に男子小学生だったことがあるひとならどこかにやっぱり今でも持っている評価基準なんじゃないかとこのごろ思う。


About this entry