メディアとしてのインターネットと10年の意味

Tech Mom from Silicon Valley – SecondlifeとTwitterは都市伝説か? を発端にtwitterがバブルだとかバブルじゃないとかいう話がウェブで盛り上がっている間に 3週間で700万ユーザを集めた顔ちぇき!の記事を読んで、これを書きます。

Second Life は、自分が学生だったらはまったと思います。就職してからはオンラインでゲームを楽しいと思えるだけどっぷり遊ぶ時間がなかったものの、Ringo’s Weblog で Flickr の前身が Game Never Ending というMMOゲームだと知ってから、ゲームとソーシャルネットワークサービスと Google Earth のような実世界のデータを網羅しているサービスのみっつは、別の方向からなにかひとつのところに向かって動いているように思えました。Second Life はその三つが混ざっているものです。APIを使って Second Life の中にあるテレビに外側から映像を映したりすることができるそうなので、そんなテレビを作ったりするのは最高に楽しそうだと思いつつ眺めているだけでした。

ミラーワールド

Game Never Ending がどんなものだったのかを知りたくて、2003年に書かれた Emerging Technology を読んでミラーワールドという考えを知り、その文脈で Second Life にも興味を持っていました。(この2003年の時点で Ever Quest 上でのGDPがロシアより多い、という話が書かれています)

ミラーワールドというのは、現実世界で集められた情報をそのまま仮想世界に反映することで、現実世界と同じなのだけれど現実世界では実現できないことが実現できて便利、みたいな話です。たとえば、ミラーワールドの中で渋谷を歩くと、人気のある食べ物屋さんだけ色が違うとか、目の前のお店で誰が何を買ったのかわかるとか、そんなことが現在でも実現可能です。そんな話はちょっと前にはまあやればできるね、くらいだったけれど Google Maps + Google Earth で、航空写真と建物の3Dデータが手に入るようになり、日本でもカーナビを作っている会社は膨大な航空写真と建物の3Dデータ、さらにテクスチャまで持っています。ユーサーチ:インターネット集合住宅図鑑 には300万件の集合住宅の写真が蓄積されています。ひとつの集合住宅に10人住んでいるものとしても日本の人口の25%くらいのひとが住んでいる場所はこのサイトに載っていることになります。

ほんの6,7年前なら、そんなの作ってもみんな遊ばないよね、と思えたけれど、いつのまにかみんなmixiのような空間で時間を過ごすのにも慣れてきて、人間の意識も変わったのに加え、過去に比べて公開されている実世界のデータも増加して、たしかにこの先にはミラーワールドがあるのかも、と思います。

でもまだそんな世界は遠い先の話です。
Word of WarCraft で Level 70 だったりするjoiが週刊アスキーのセカンドライフ特集でのコメント いま遊んでる人って、インテリでフェティッシュな趣味の人だけだし、アランケイもOpen Croquetやってるし second life だけが仮想生活手段ではないからいろいろ不安要素あるよね(手元にないため記憶で書いています)のとおりで、セックススクリプトで自分のアバターががくがく動く、動かすのが楽しいと思えたりするインテリでフェティッシュなひとたちにはバカうけするだろうけど、そんなひとはそう多くないと感じていました。

どうでもいいですが、自分が遊ぶときはスクリプトでいろいろ動くものをつくるロボットアーキテクトになりたいと思っています。

ロガー


SONYの CX-PAL70号 つながる風景 より

twitterは、自分にはロギングツールとして映りました。
世の中には、勝手にロガーと呼んでいる、とにかくなんでもかんでもログを残しておきたいひとがいます。ブログ(そもそも名前からして web-log です)や、30分おきに写真を撮って残すライフスライスGPSでアヒルの絵を描くひとや、再生した曲をログに残す音ログ、起動したアプリケーションのログをとるWakoopaなんかはロガーのツボです。後で見返したりはしないけれど、記録が残っていれば後で見返すことができる、という安心感、”すべて”が記録されている、という満足感があります。

twitterがロガー向けツールかどうかは別として、ロガーが自分のログを手でとるのに便利なツールなので、非ロガーが使わなくなってもロガーはロギングツールとして使い続けるだろうと思います。ブックマークしたとか、ウェブ見てるとか、いまこれ聞いてるとか、いろいろツールができちゃったのでますますロギングツールとして優秀になっていっています。

そしてロガーはインテリでフェティッシュなひとたちよりかは数が多そうです。

生物学的10年

WBS2.0 vol.7 で聞いてからずっと印象に残っているのが Web1.0時代はWebに誘導するところから始める必要があった。Webができて10年経って、昔Webを使っていたユーザはそのまま今も使っていて、さらに小さい子供だった世代が10年経ってWebを使うようになって、どうやってWebにひとを集めるか、という問題は生物学的に解決された(自分のメモをもとに書いています)という話です。

逆に10年前のWebを振り返ると、数十万円のキカイを買って、高い電話代を払ってインターネットに繋いで見られるものは、テレビと比べると絶望的に汚い画像とテキストだけの音も出ない世界で、それこそインテリでフェティッシュな趣味のひとたちのおもちゃだったと思います。使っている人たちは、だいたい大学生から20代後半くらいまでの新しいものが好きなひとだったように思えます。
統計資料がありそうですが、自分の印象として10年前のインターネットの大半のユーザは、年齢の幅は10くらいしかなくて、みんな数十万円のキカイを汚い画像やテキストを読んだりするために注ぎ込むようなインテリでフェティッシュなひとたちです。

自分は23時から朝までStarCraftで韓国人と通じない英語でチャットしたり、これまた拙いperlでCGIを作ったりVisualC++をいじったりもしてました。

そのころから10年経って、インターネットにつなぐのに数十万円のキカイを買う必要はなくなりましたし、自分は23時から朝まで遊んだりするのはちょっとつらい会社員になっています。昔数十万円のキカイを買ってインターネットに繋いでた人たちは、自分と同じように、ウェブサイトを開発していたり、ウェブ上のメディアを作るようになっていたり、ウェブとは関係のない仕事をしていたりするようになっています。そして10年のあいだに、インターネットにはそんな昔からのユーザのほかに、”IT革命”といわれて使い始めた人たち(うちの父はそんなかんじです)や、数十万円払ったりしなくてもはじめから自分の手元にあった携帯電話でひまつぶしができるからインターネットに繋いでいるひとたちが加わりました。

パソコンのインターネットとケータイのインターネット

mixiなんてたいしたことないモバゲータウンすごいよ、くらいのところからか、パソコンのインターネットとケータイのインターネットでカルチャーが違う、という話をインターネット上のメディアでよく目にするようになりました。自分はその昔ヤプース!を作っていた延長線上で、携帯電話で位置を取得してサーバに送ってなにかする、のような位置情報を利用したサービスに興味があり、そのため ここギコ!: BitPets、マジすごい… で紹介されていた携帯電話向けのサービスであるビットペッツを数ヶ月遊んでみています。

マップルとかを作っているあこがれの地図の昭文社の子会社が提供しているサービスで、ペットを育てつつブログを書いたりします。ペットを散歩させると、ほかのユーザが書いたブログを拾ってきてそれを読むとおかねが貯まったりペットのレベルが上がったりします。自分が今いる実世界上の位置に応じて得られるアイテムが変わったり、ちかくのお店の情報を教えてくれたりします。
個人的にはあんまり楽しめません。でもユーザは30万人いますし、上のエントリでも書かれている通り、アクティブなユーザが常時5,000人くらいいます。

モバゲータウンも、名前は知っているけど遊んだことはない、というひとが多いのではないでしょうか。ともだちを招待するとモバゴールドが得られるのであまり乗り気でなさそうなともだち二人を入会させて、どんなものなのかを見せたりしました。アバターが作れて、Flashのゲームが遊べて、ブログが書ける、みたいなサイトです。個人的にはモバゲータウンはもっと楽しめなくて、3回くらいしかアクセスしていません。(のでどんなサイトかの説明は適切でないかもしれないです)

このことは、パソコンのインターネットとケータイのインターネットとでカルチャーが違うということを意味しているのでしょうか。たしかにパソコンとケータイで全くカルチャーが違っています。自分はビットペッツもモバゲータウンも楽しめませんでした。カルチャーは確かに違っているけれど、ほんとに違っているのはPCのインターネットを使ってきた人たちの、インターネットというメディアに対する現状認識だと思うのです。

10年前に数十万円のキカイを使ってインターネットに繋いで、汚い画像とテキストの中におもしろさを見いだしていたインテリでフェティッシュな人たちだけだったインターネットというメディアは、いまでは携帯電話のおまけとしてタダみたいな金額で接続できるようになっています。そしてそこで楽しむことができるコンテンツも、まだ画質は悪いけれどふつうにテレビと同じものを見たり、CDと同程度の音質で音楽が聴けたり、誰にでもわかりやすく楽しいといえるものになりました。
費用と中身が変わった結果、10年前と比べてインターネットというメディアは、幅広い年齢層と幅広い価値観を持つユーザにアクセスできて、アクセスしてもらえるようになっています。

10年前は、インターネットにアクセスするユーザの年齢の幅が小さく、絶対的な人数も少なく、そして汚い画像とテキストから楽しさを見いだすという点で価値観を共有していました。が、10年経ってWeb上には数十億のページが生まれ、ユーザの年齢層も広がっています。そもそもこわいものなんてなにもない10代の高校生と、今日は子供が熱を出したから早くうちに帰ってあげないと、と心配している30代とで、おなじものを楽しいと思えるでしょうか。

でもそれあたりまえだから

でも、ふと立ち止まってたちどまってまわりを見渡してみると、みんながひとつのものをおもしろいと感じない、というのは当たり前のことです。インターネット以外のメディアを見てみれば明らかです。雑誌というメディアを例にとってみれば、各雑誌は性別、年齢、年収別に細かくターゲットを設定して編集されています。もっとニッチに、ゴルフだけとか、食べ物だけとか、文学だけとか、鉄道だけとか、細かく分かれています。そして、ゴルフ雑誌で”最近電車楽しいってはやってるらしいけどあれってぜんぜん理解できないよね”みたいな記事が組まれたりはしません。

読む側にも作る側にも、だってこっちゴルフであっち鉄道でそもそも別のものじゃん、という認識があります。

でもメディアがインターネットになると、ひとによって何が楽しいかは違う、という認識は薄くなって、これからはみんな Second Life でその次は twitter みたいな空気が作られています。それはまだインターネットがメディアとして完成されていなくて、まだまだ使っている人たち全員を巻き込むだけの大きな変化があり得ると感じられるからでしょう。ただ、それが思っていたよりも小さな範囲の人たちにしかアピールしなかったら、あれ、なんか誰かが Second Life 楽しいよって言ってたのにやってみたらあんまりおれ楽しくなかったんだけど、なにこれ?みたいなひとがたくさん出てきてしまいます。

作っているひとたちも、見ている人たちも、インターネット上で自分が楽しいものとひとが楽しいものとは違う、と肌で分かっていて、インターネット上で何を楽しいと感じるかは、世代や生活スタイル、趣味嗜好で違っていて、ひとつのサービスでみんなが楽しいって盛り上がることはめったにない、と、考えていそうです。

きっかけになった Tech Mom from Silicon Valley – SecondlifeとTwitterは都市伝説か? は、自分ははじめ読んだときにそれは違うだろ、と感じたのですが、改めて読み返すと

  • アメリカでは盛り上がりのピークは越えた。日本で盛り上がってるのがへんなかんじ
  • 何が楽しいのか分からない、というひとも多い
  • 実際のユーザ数少ないのにみんな盛り上がり過ぎなんじゃないの?

という主張をされているだけで、SecondlifeとTwitterの流行り方の違い/ついでにTwitterを使ってみての感想 : ARTIFACT ―人工事実― は一部のひとで盛り上がるサービスは多数ある、と同意しつつ”Twitter は Second Life のときと比べると実体があって同じに扱うのはやりすぎですよ”と主張されている。
F’s Garage:〔日記〕twitterとセカンドライフ でも、書いてある内容に反論しているというよりは、みんなが楽しいって言って遊ぶようなサービスじゃなくったっていいじゃん、と主張されているだけで、三者の意見と認識はそう変わらないのではないでしょうか。

ただ、三者の中で”人気のサービスとはユーザのうち100%の誰もが使うサービスじゃないとつまんない”という認識が、崩れてきてはいるけれど、でもまだ残っているのが話に納得できない原因に思えます。
これは自分の話ですが、海部さんの書かれたギークメディアでは、セカンドライフを評価する人と「ボクにはよくわからない」という人が分かれて、いまひとつ話がほんわか盛り上がらない。という部分を読んで、理解できないというギークが多数いて100%じゃないからぜんぜんダメ、みたいに読んでしまったり、Twitterについても、「実はユーザー数は○○ぐらいしかいないんだよ」という話を、つい先日、かなり信憑性の高いソースから聞いて、この「○○」の少なさにぶったまげたばかり。の部分で、ぜんぜんユーザの少ないつまんないサービス、のように感じて、いーやこんだけ楽しい!と言い返したくなったりしているのでは。改めて読み返すと、”サービスはこうあるべきだ“という考え方、サービスに対する愛情に違いはあるかもしれませんが、主張していることは同じに思えます。

Second Life も Twitter も、楽しいひとには楽しいけど、すべてのユーザが楽しいと言って遊ぶようなものではなくて、そこらへん騒ぎすぎてるひといるよね、ということ。

10年前は使っている人たちが似たり寄ったりだったし、そもそもインターネット上になにもなかったので、なにかが出ればみんなはそこに集まった。それから10年経った今は、ユーザ層に厚みが出てきて、世代や生活スタイル、趣味嗜好で楽しいものも違ってくるようになっている。でも普段それをあたりまえのこととして意識していないから、話がもつれちゃうことがある。

インターネットがメディアとして成熟して、使うユーザの年齢も生活スタイルも価値観もばらばらになっているのだから、一部でおもしろいと言われているものがみんなにとっておもしろいというのはそう頻繁に起こることではなくなっていく。そして雑誌をはじめとした古くかるメディアがやっているようなターゲットを意識した作りをしていかなければいけない。

と、転職してしばらくしたころに、20くらい歳の離れたひとに言われたなあ、というのを思い出した。
いまごろどういうことなのかが分かりました。

余談: 大きなメディアはパソコンのインターネットが好き

ビットペッツの話を知ってから、携帯向けのサイトの情報を知りたいと思ってさがしたけれど、インターネット上の大きなメディアはあんまり携帯向けのサービスのニュースを扱っていなかった。

実際、ユーザがリピートするかどうかは別として世間ではmixiとかモバゲータウンどころでなく注目を集めているらしい 3週間で700万ユーザを集めた顔ちぇき! は、ウェブの中では、ほとんど目にしなかった。今検索してみても大きなメディアには ITmedia +D モバイル:“芸能人の誰に似てる?”をケータイでチェック──「顔ちぇき」登場あなたはどの有名人に似ている?–ケータイで撮影して判定する「顔ちぇき」 – CNET Venture View くらいしか記事がない。個人的には Twitter / igi のとおりであれば、均等にならしても秒間4ユーザ(pvでなくてユーザ)をさばいてるわけなのでバックエンドがどうなっているのかすごく知りたい。しかもページをサーブしているだけでなく、画像の解析もしているのだからすごい。

めざましテレビで紹介されたことがユーザを集めるきっかけになったようだ。

インターネットの大きなメディアを作っている人たちも、おさらく10年前に数十万円のキカイを使ってインターネットに繋いでいたインテリでフェティシュなひとたちなのだろう。その人たちが、ケータイカルチャーは楽しめないので(だって楽しいと思う人たちと年齢も生活スタイルも価値観も離れてるんだもん)あんまり紹介しないのはわかるし、そのメディアを読んでいる人たちも10年前におなじような人たちだったのだろうから、紹介してもウケが悪いので紹介しにくいのかもしれない。

ただでもこのままだと、いつのまにか”パソコンのインターネット”チームは、携帯とテレビの間の谷に落ち込んで、10年前からパソコン使ってるからもう死ぬまでパソコンチーム、になってしまう。今までの我々“パソコンのインターネット”チームが、テレビみてるチームを滑稽だと眺めていたり、いつまでもRSSにスイッチしないひとたちチームを哀れに思っているのと同じように。
悪いことのように書いたけれど、死ぬまでパソコンチームなのが悪いことじゃない。人間死ぬまで楽しく生きられれば楽しい人生なのだから。ただ、ほかにも選択肢があって、そのなかからひとつを選んだ結果のパソコンチームでありたい。

だから、ユーザが10万人オーダーのサービスがふつうにある世界の、携帯向けサービスのニュースをもっと強化してほしいです。


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